| 【増】本名 短刀 【原】今日の制度では環刀は刃長が3尺3寸、柄長1尺、総重量1斤8両。(【案】武備志によれば短刀だが湾曲していて、我が国の還刀とすこぶる似ている。したがって両刃剣を共に図にのせる) |
| 茅元儀曰く「昔の刀剣は戦闘に使うことができた。 ゆえに唐・太宗には千人の剣士がいた。今日では、もうその技法は伝わっておらず、断片的な文書は残るのみで、中に訣歌があるが、その説の詳細は不明だ。近ごろ好事者が朝鮮でそれを得たが勢法が備わっていた。もとより中国で失われたものを四裔で救っていたことが分かったので、西域の等韻(西域の僧・神珙が音韻に通じて撰述するなどした切譜)と日本の『尚書』(欧陽修の日本刀歌に、徐福が日本に渡ったときにはまだ焚書が行われていなかったため、今なお百篇の逸書が存在するが、中国に伝えるのを絶対に許さなかったので、世の人は古文書のことを知らなかった。書経・古書を徐福が持って行ってまだ日本にあると話したのは、おそらく口実だろう)と知れる。左の剣訣歌を載せる。 |
| 摯昆吾晃太陽、 一升一降把身藏。 (左右四顧四劍) (昆吾は、列子曰く、西海上には昆吾が多く、石を取り、鉄を冶り、玉を泥のごとく切る剣を作る。晃の音は胡廣切、意味は明るい) 搖頭進步風雷響、 滾手連環上下防。 (開右足一劍、進左足一劍、又左右各一劍、收劍。) (滾の音は袠、意味は顔を流れる水) 左進青龍雙探爪、 (縮退二步、開劍、用右手十字撩二劍、刺一劍。) 右行單鳳獨朝陽。 (用左手一刺、跳進二步。左右手各一挑、左右手各一蓋。右手一門轉步、開劍作勢。) 撒花蓋頂遮前後、 (右滾花六劍、開足。) 馬步之中用此方。 蝴蝶雙飛射太陽、 (左足進步、右手來去一劍。左足進步、左手一刺一晃。) 梨花舞袖把身藏。 (退二步、從上舞下四劍。) 鳳凰浪翅乾坤少、 (進右足、轉身、張兩手、仍翻手。左手一劍、右手來去二劍、左手又一劍。開劍、進右足。) 掠膝連肩劈兩旁。 進步滿空飛白雪、 (從下舞上四劍、先右手。) 回身野馬去思鄉。 (右手抹眉一劍、右手抹腳一劍、抹眉一劍。左手抹腰一劍、一刺、右劍一手收劍。) 朝鮮勢法は初めに眼法、撃法、洗法、刺法を習う。撃法には五つある。すなわち豹頭撃、跨左撃、跨右撃、翼左撃、翼右撃だ。刺法には五つある。すなわち逆鱗刺、坦腹刺、双明刺、左夾刺、右夾刺だ。格法には三つある。すなわち挙鼎格、旋風格、御車格だ。洗法には三つある。鳳頭洗、虎穴洗、騰蚊洗だ。 また曰く、昔は兵は必ず剣について言及したと言う。今はもう陣において使わないから失伝してしまった。私が遠く海外に聞き込みしてその方式を得てきたので、また緩くなってはいけない。刀剣装飾は銀、鍮石、銅粗などを混ぜた品だ。近ごろ辺臣が棟が厚くて短い剣を製造することを要請した。軍ではそれはすこぶる使いやすい。」
|
| 【増】清異録に曰く「唐の剣は全て鞘が短くて、常に脇の下に身に着けるので、これを腰品と呼ぶ。」 【案】環刀はすなわち中国の腰刀だ。 旧譜[武藝新譜]には双手刀、鋭刀、倭剣、双剣、提督剣、本国剣、馬上双剣などが載っている。それぞれ名前が同じでないといえども、用いるのは全部腰刀だ。両刃を剣といい、片刃を刀という。後世、刀と剣は混同された。 しかし古代には剣を崇め、後世には刀を崇めた。これは武器としての利鈍に関係なく、おそらく習俗が同じでないためだ。 事物紀原が云うには「燧人が刀を作ったがこれが刀の始めなり」 管子が云うには「蚩尤が剣を作ったがこれが剣の始めなり」 釈名が云うには「劒は撿なり。 非常の時に防備することで両面に各々中ぐらいの高さの刃脊がある」というのがこの剣の形式だ。 中国は剣術を伝えずとも、その武器は稀に残っている。茅元儀が剣術が伝授されないことを深くなげいて自らその劒譜を撰述し、また、その図を伝えて一度は朝鮮で秘訣を得たと話し、一度は海外で方式を得たとも話すが疑わしい。 |
| 『周礼訂義』に曰く、「およそ剣の制度には鋒、刃、脊(棟)、鐔(読みは尋)、鋏(ハバキ)がある。鋒は鋭くする部分で、刃は切る部分で、脊は幹になる部分であり、鐔は根元の部分であり、鋏は鐔に附いている部分だ。」 方言に曰く、「刃先を鋒といって、その根本を環といって、その室になるところを削(読みは笑、鞞[さや]のこと)とし、室口の装飾を琫として、その下の末端の部分の装飾を琕(補頂反)という。」 |
| 茅元儀曰く、「鉄は多く鍛練(銅鉄を扱って煎って成熟させること。作煉に通ず)しなければならない。刀には純粋な鋼鉄(錬鉄)を使う。背を起こして平削を用いて平たく削り、始めて刃に至る。 刃を平たく研磨してこそ鋭い。 近ごろ匠人が刃の厚い部分をたたいて平たく研磨しないで横から折るにとどめてしまった。刃の両側の下がなめらかでなければ刺しても深く入らず、刃先が一度すりへればすぐに頑鉄になる。刀は手と同じように軽くなければならない」(【案】これは藤牌に使う腰刀の制度といえども、練磨の方法がすこぶる備わっているから記録する。) |